45年後の給食。
今週のお題「給食」
「昼食、ここに置いておきますね」という声を意識の片隅で聞く。薬の副作用が抜けきれず頭が半分眠っている。
薄目を明けると白い専用服をまとった恰幅のいい職員の女性が散らかる机上を片づけてトレーを置き
去るところだった。目が合った。
「食欲増しちょるけんね」目尻を下げて会釈しながら下がっていった。
高カリウム症...聞き慣れない病名だった。
具合が悪くなり自分で救急車を呼んだのが10日前。即入院、結局腎臓病であるネフローゼ症候群と診断され、臨時透析。
1日の水分と塩分の摂取量が制限された。水分700ml 塩分6g。季節は春。
24時間点滴のため夜間のトイレもそいつを引きずっていった。
テーブルに置かれたミルク色のトレイ。
うん、なんとなく懐かしい感覚。
なんだ、コレ。
おう!小学校のときの給食みたいやんか。(^^;
「○○さん、ここに置いておきますね」
先ほどの職員さんが斜め前のベッドに声をかける。カタッ、と音がした。
患者によって、少しずつメニューが異なり症状によって日々変化する。
この大病院の同じ時間にそれぞれの献立で配膳される。これもテクノロジーの恩典なのか。
でも、職員数はギリギリだと聞いたことがあるなあ。
どこからか、耳馴染みのあるチャイムの音が聞こえた気がした。
同じ時間に同じモノを食べる。
昼休みにドッジボールの場所を確保するために、おかずとパンを牛乳で流し込んでいたあの頃の給食。
少しずつ頭がクリアになってきた。
さあ、昼からはレントゲン。
食っておくぞ!!
ベッドの上に起きあがろうとしたが、腹筋がひきつった。筋肉そげ落ちたな....オレ、と思いながらトレーを引き寄せた。
放送部が仕切る昼の放送のテーマ曲♬が、薫風と共にこの病室に入ってきた気がした。